「如浄禅師が、人間の心を老梅樹にたとえて説示しているもの。」天童山の仲冬のはじめ、槎牙(さが)として老いたる梅樹もたちまち花をひらく一輪二輪。さらににつぎつぎ無数の花をひらけども、あえて清きを誇らず、薫ばしきをも誇らない。そこに突如として春風きたって草木を吹けば、風のまにまにたちまち変じて、雲水ども禿頭(とくとう)にぞ似る。落下は袞(こんこん)として、やがて大地に雪のごとく敷く。まこと老いたる梅樹は想像を絶したものもので、ただ寒さに凍った鼻をなでまわして、しわぶくのみである。(道元:正法眼蔵・梅華)