「慧根とは」慧根とは、仏智慧の根本の働きである。これは言葉で説くことができないものである。鼻孔の出入の息の消息であり、拳頭に指があるという至極当然のことが慧根である。鼻孔・拳頭みな自らの全現である。これが慧の解脱の相である。仏性の全現である。驢馬が井戸の水を見ているとき、井戸の水の影も驢馬をみている。両者ともに観ることに徹している。観るものと観られるものの両者の差別を超えた解脱の境をあらわしている。慧は絶対性のもので余物をまじえない。慧根は慧根を相続するのである。(道元:正法眼蔵・三十七品菩提分法)