重々無尽

華厳経において「重々無尽」という表現があります。その意味は めいめいの人は小さな宇宙であると同事に、その中に大宇宙を内包しているということです。内に秘めているのです。つまり、人にはその人が育つまでにいろいろな環境、条件、状況がみな違っているのです。多くのものによって支えられ生かされているのです。一人一人の中には偉大な過去が生きているのです。いかなる人も両親から生まれているわけです。その両親は自分の中に生きているわけです。その前の世代の両親もまた子孫に何かを残し生きていたのです。千年も遡ったら先祖は何十万の人になるでしょう。そういう人が、みな今の自分の中に生きているのです。別の言い方をすれば多くの人々と同じ祖先を共有しているということになります。目に見えない祖先が自分の中に生きていることです。ほかの人の中にも同じように生きているのです。墓じまいとか何かと先祖に対しての崇敬が乏しくなっている現在、他人から引き離された自分はないことを自覚し、「自分は何者か」とお彼岸の日には考えてみるのもいかがでしょうか。