「ある僧が宝智大師に問うた」「大悟底の人が、ふたたび迷った時にはどうなるでしょうか」「大師は、破鏡は重ねて照らさず。落花は枝にのぼりがたいじゃ」まず、大悟した人がふたたび迷ったならば、それは、いまだ悟らない人と同じであろうか。あるいは、大悟した人がまた迷うという時には、大悟をひねりまわして迷いを造りだすのか。それとも他の処から迷いを持ちきたって大悟を覆うのでもあろうか。あるいはまた、大悟した人がまた迷うというのは、その大悟はそのままであるが、同じ人がまた迷いに突き当たるのであるか。それとも、さらにもう一つの大悟をひねり出すのを、かえって迷いというのであるか。あれこれと研究してみるがよろしい。(道元:正法眼蔵・大悟)
万葉集「柿本朝臣人麻呂一首」「淡海乃海 夕浪千鳥 汝鳴者 情毛思努尓 古所念」(おうみのうみ ゆうなみちどり ながなけば こころもしのに いにしえおもほゆ)「近江の琵琶湖の夕浪にさわぐ千鳥よ、お前が鳴くと、心もしをしをとしをれて、昔のことが思われる。」