いまの大悟「今というのは人人のいまである。過去を思い、未来を思い、現在をおもおうとも、すべていまである。悟りには第二級品などはない。たとい第二頭であっても、それが悟りを成じたからには、もはや本物だとしなければならない。だから、たとい第二頭であろうと、第三頭であろうと、悟りは悟りであろう。もし第二頭があればその前には第一頭があるはずである。それは別だとするのではない。それは、たとえていえば、昨日のわれも、われである。昨日われから見れば、今日のわれは、第二番目のわれだというようなものである。いまの悟りは昨日のそれではないとはいわない。いまに始めたものではないからである。だから、大悟の頭が黒かろうと白かろうとなんの思い煩うことはない。(道元:正法眼蔵・大悟)