「菩提達磨のこと」「そもそも初祖達磨は、釈尊より数えて第二八世の正嫡の仏祖である。仏道に入てより以来、その身分はいよいよ重い糧だある。そのような敬重すべき聖者が、なお師の命によってその身分を惜しまないのは、ひとえに教法を伝えんがためであり、衆生を救わんがためである。この初祖の渡来より以前には、中国にはまだ一度も正嫡の仏祖が見えられたことはない。その初祖渡来以後においてもその遠い流れをくむ部祖のほかには誰も渡来してるのはない。前世から植えてきた智慧の種子のないものは、仏祖の流れを汲まず、ただいたずらに名目や法相の邪路に流浪するのである。可哀想なことである。(道元:正法眼蔵・行持(下))