「五祖大満弘忍のこと」大満弘忍は、父なくして生まれたため母の姓を名告ったのである。老子と同じである。七歳にして法を伝えてから七四にいてたるまで、仏祖の伝える正法の眼目をよく保ち持って、ひそかに衣法を慧能につたえた。そのころ慧能は、なお雑役のものであった。誠に独特のものであった。しかるにその衣法を上座の神秀につたえず慧能に伝えたからして、正法の寿命は絶えなかったのである。(道元:正法眼蔵・行持下)