「心不可得は諸仏なり」「心不可得、これが諸仏の保持するところである。諸仏はこれを最高の智慧としてその身に保持してきたのである。「金剛経」にいう「過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得」それが諸仏の保持するところの心不可得を、そのままに言い表している。諸仏は、三界は心不可得である。諸法は身不可得であると会得してきたのである。それを明瞭に会得することは、諸仏にならわねば得られないのであり、諸祖にならわねば伝えられないのである。(道元:正法眼蔵・心不可得(後))
「原文」「心不可得者、諸仏なり。阿耨多羅三藐三菩提と保任し来れり。金剛経云、「過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得」これすなわち、諸仏なる心不可得の保任に現成せる。三界心不可得なり。諸法心不可得なりと保任し来れるなり。これをあきらむる保任は、諸仏にならはざれば証取せず。諸祖にならはざれば正伝せざるなり。」