「看経の作法5」「僧堂の中での看経は、声をあげて読まず、低い声で読む。あるいは、経函を披いて文字をみるだけであって、経を読むにいたらず、ただ看るでけである。そのような経函のためには、たいていは、金剛経、金光明経、あるいは、法華経の普門品、安楽行品などを、幾百巻・幾千巻となく常備しておく。それぞれの僧が一巻ずつ看経するのである。看経がおわると、先の盤台もしくは経函をもって、それぞれの坐席のまえを通るとき、おのおのの経をそれに納める。とる時にも、おく時にも、いずれも合掌をもってする。とる時には、まず合掌してからとる。おく時には、まず経をおいてそしてから合掌する。そして、そののち、それぞれに合掌して低い声で回向する。また、僧堂ではなく、平常一般の場処で看経するにも、都寺・焼香・礼拝・俵銭など、みな施主の場合と同じである。手炉をもとことも同じである。また衆僧のなかに施主となるものがあって、僧衆の看経を請うときも、俗人の施主の場合と同じである。焼香・礼拝・巡堂・俵銭などもあり、知客が先導することも、俗施主のようにするのである。」(道元:正法眼蔵・看経)
原文「雲堂裏看経のとき、揚声してよまず、低声によむ。あるいは看経をひらきて、文字をみるのみなり。句読点におよばず、看経するのみなり。かくのごとくの看経、おほくは金剛経・法華経普門品・安楽行品・金光明経等を、いく百千巻とんく、常住にまうけおけり。毎僧一巻を行ずるにり。看経をはりぬれば、もとの盤、もしくは函をもちて、坐のまへをすぐれば、大衆おのおのの経を安ず。とるとき、おくとき、ともに合掌するなり。とるときは、まず合掌してのちとる。おくときは、まず経を安じてのちに合掌して回向するなり。もし常住公界の看経には、都監寺僧・焼香・礼拝・巡堂・俵銭、みな施主のことし。手炉をささぐることも、施主のごとし。もし衆僧のなかに施主となりて、大衆の看経を請するときも、俗施主のごとし。焼香・礼拝・巡堂・俵銭等あり。知客これをひくこと、俗施主のごとくなるべし。」