「この問答をあげて、爲山が仰山に問うていった。「これは、黄檗が南泉のこころを汲みえなかったのではあるまいか」仰はいった。「そうではありません。黄檗には虎を陥れる機略があることがしられます。」爲山はいった。「なんじの見るところは、なかなか成長するところがあったなあ」爲山のいうところは、さきの問答においておうばくは、南泉の意をつかまえ得なかったのではないかという。仰山は、黄檗には虎を陥し穴にして捉えるほどむ機略があるといった。すでに虎を陥し穴にしたならば、虎の頭をとることができよう。さすれば、もはや独歩独行のおもむきがあろう。仏性明らかに見ればまた一隻眼を開くのか、仏性が明らかに見ればまた一隻眼を失うのか。では、速やかにいってみるがよい。仏性を見るところは、どのくらい成長したのであろうか。そこでは、半分も全部も依らずである。百物も千物も依らずであり、百時千時もまた不依倚である。かくていう。籠は一枚、時は十二時、依るも依らずも、葛藤の樹によるごとし。全天全地、畢竟していまだ語あらず。」
原文「この因縁を挙げて爲山、仰山にとふていはく。「莫是黄檗搆他南泉不得麼」仰山いはく、「不然、須知黄檗有陥虎之機」爲山云「子見処得恁麼長い」大潙の道、そのかみ黄檗は南泉を搆不得なりやといふ。仰山いはく、黄檗は陥とらの機あり。すでに陥虎することあらば、将虎頭なるべし。陥虎将虎、異類中行。明見仏性也、開一隻眼。仏性明見也、失一隻眼。速道速道。仏性見処、得恁麼長いなり。このゆへに、半物全物これ不依倚なり。百千物不依倚なり、百千時不依倚なり。このゆゑにいはく、籮籠一枚、時中十二、依倚不依倚、如葛藤倚樹。天中及全天、後頭未有語なり。」