大いなる智慧の完成」「観自在菩薩が甚深の智慧を修行し成就したもうた時には、全身をあげて五蘊のみな空なることを明らかに観じたもうた。五蘊というは、色(現象)・受(感覚)・想(表象)・行(感情と意志)・識(意識)である。かくて五つの智慧がある。明らかに見ることがすなわち智慧である。。その主旨するところを説いたのが、色即是空であり、空即是色である。色とは現象であり、空とは変化し移ろうのである。百草がそうであり、よろずの現象である。」(道元:正法眼蔵・摩訶般若波羅蜜)
原文「観自在菩薩の行深般若波羅蜜多時は、渾身の照見五蘊皆空なり。五蘊は色・受・想・行・識なり、五枚の般若なり。照見これ般若なり。その宗旨の開演現成するにいはく、色即是空なり。空即是色なり。色是色なり。空即色なり。百草なり、万象なり。」
五蘊とは、人間を構成する物質的・精神的要素を五つのグループに分けて観察するのである。色(現象するもの)と、受(感覚作用)・想(表象作用)・行(意志作用)の四つの精神的要素がそれである。それらの要素のそれぞれを観察して、そこには、いずれも、なんらの変化せざる固定的なもの、本質的なものは存しないことを知るとき、それを「皆空」となすのである。
色即是空、空即是色とは、色すなわちこの世の現象するものは、ことごとく変化し移ろわざるものはない。そのゆえにこれを空なりとなす。それを翻していえばそこにはただ変化する現象的存在が存するのみである。空即是色とはそのことである。