「あるいは、智慧の成就に十二の名目がある。六根と六経がそれである。また十八の智慧がある。眼・耳・舌・身・意の六根、色・声・香・味・触・法の六境、及びそれぞれの交渉によってなる眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識がそれである。また四つの智慧がある。苦・集・滅・道の四諦がそれである。また、六の智慧がある。布施・持戒・忍辱・精進・静慮・智慧の六波羅蜜がそれである。また、ただ一つの智慧の成就があって、いま現に成就しておる。比すべき者なき等正覚がそれである。また、智慧の成立に三つがある。過去・現在・未来がそれである。また、六つの智慧がある。地・水・火・風・空・識がそれである。さらに四つの智慧がある。世のつねにおこなわれる行・往・坐・臥すがそれである。(道元:正法眼蔵・摩訶般若波羅蜜)

原文「般若波羅蜜十二枚、これ十二入なり。また十八枚の般若あり、眼耳鼻舌身意、色声香味触法、および眼耳鼻舌身意識等なり。また四枚の般若あり,苦集滅道なり。また六枚の般若あり、布施・淨戒・安忍・精進・静慮・般若なり。また一枚の般若波羅蜜・而今現成なり。阿耨多羅三藐三菩提なり。また般若波羅蜜に三枚あり、過去・現在・未来なり。また般若六枚あり、地・水・火・風・空・識なり。また四枚の般若よのつねにおこなはる行・往・住・坐・臥なり。

般若波羅蜜十二枚:六根すなわち六つの感覚(眼・耳・鼻・舌・身・意)と六境すなわち六つの感覚の対象(色・声・香・味・触れ・法)とが、それぞれ相関わることによって人間の認識作用が成立する。その真相をあきらかにすれば、一切の存在とはその他の何物でもないことが知られる。その事を明らかに把握することもまた智慧の成就であるが、それには十二の名目がある。なおそれにつづいて「十二入」とあるのは、それらの相関りを「渉入」と称するのである。

十八枚の般若:六つの種類の認識、すなわち、眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識をさきの十二項にくわえて十八項となすのである。

四枚の般若:いわゆる六波羅蜜である。布施・持戒・忍辱・精進・静慮・智慧の六つである。そのいずれも修するのもま大いなる智慧の成就にいたることができるのである。